冊子・福知山市鳥瞰図(吉田初三郎・昭和13年)

福知山市街図002
昭和13年に市政開始から1年後の昭和13年に福知山市が発行した福知山市案内の小冊子で、
表紙と中に収められている福知山市鳥瞰図は吉田初三郎の作画となっています。
これは表紙。福知山城跡と昭和6年に完成した5代目音無瀬橋。その奥には烏ヶ岳と思われる山が見えます。
右上に吉田初三郎の署名があります。
福知山市街図003
※画像をクリックすると拡大します。
中に収められている福知山市鳥瞰図。
吉田初三郎の鳥瞰図は大きなデフォルメを特徴としたもので、この鳥瞰図にもありますが、福知山市からは本来望むことが不可能な富士山や天橋立、さらには朝鮮半島までも描かれているのが特徴です。
鳥瞰図はおそらく昭和13年の数年前までの福知山市街を描いたものと思われ、記されている銀行や工場や学校・官公庁の様子をうかがうことができます。
福知山鳥瞰図拡大1
市役所周辺。戦前までは市役所の周りには連隊区司令部や憲兵分隊、背後の伯耆丸台地には福知山陸軍衛戍病院がありました。描かれている陸軍病院下の石垣は現在もそのままです。憲兵分隊の建物は現在同じ場所に絵と似たような建物が残されていますが、憲兵分隊の建物であったかどうかは不明。
福知山鳥瞰図拡大2
南岡の歩兵第20連隊の部分。現在の陸上自衛隊第7普通科連隊駐屯地。20連隊の兵舎の配置は割と適当のような感じに見えます。左側の陸軍墓地は現在も平和墓地と名を変えて現存していますが、忠魂碑や各墓標の位置など正確に描かれています。
大正期の宇垣軍縮までは20連隊の敷地に第20旅団司令部があり、陸軍墓地の南側には工兵第10大隊がありました。
福知山鳥瞰図拡大3
福知山城跡の部分。昭和61年に天守閣が復元されるまでは天守台に唯一残された銅門番所が移築されてました。描かれている石垣や銅門番所・朝暉神社・本丸石垣下の神社や石碑など戦前当時の福知山城跡の姿がかなり正確に描かれています。
福知山鳥瞰図拡大4
御霊神社と郡是製糸福知山工場の部分。描かれている昭和6年築の郡是製糸の事務所は現在もそのまま残されています。
御霊神社の迎賓館は現在長安寺公園に移築されています。両丹銀行本町支店は現在、桐村眼科として使用され現存。
銀行に関しては両丹銀行と百三十七銀行が目立ちます。両丹銀行は昭和11年に何鹿銀行・治久銀行・高木銀行・福知山銀行が合併して設立された銀行で、両丹銀行新町支店となっている銀行は近年まで残っていた元福知山銀行本店でした。
福知山鳥瞰図拡大6
両丹銀行新町支店の向かいに注釈はありませんが大きなビルが描かれています。これは旧三ツ丸百貨店で、現在ぽっぽランドとして使用されている建物です。
福知山鳥瞰図拡大5
福知山駅の部分。現在の駅舎になる前までは運輸事務所の建物もあった記憶があります。
駅前の百三十七銀行の建物は近年の再開発までそれっぽい古いビルが残っていました。
鐘淵紡績福知山工場の敷地は今もクラシエのカネボウフーズの工場があります。
福知山鳥瞰図拡大7
郡是製糸福知山工場の右手に福知山西駅という駅があります。これはかつて存在した北丹鉄道の駅舎で、大江町の河守駅から由良川沿いを走り福知山駅に繋がっていました。
北丹鉄道は昭和49年に廃線となりましたが、現在もトンネルや橋脚が残されています。
吉田初三郎の鳥瞰図は各建物が簡略化されて描かれていますが、建物の形や特徴はしっかりと捉えられており、福知山城跡の石垣も形は正確で実際に現地で取材して描いたといわれる吉田初三郎のこだわりを感じます。
裏面には福知山市の観光名所を紹介した写真付き解説が書かれています。
鉄道旅行案内1
吉田初三郎は大正から昭和にかけて日本中の市街地や観光地の鳥瞰図を数多く手掛け、当時は「大正広重」と称され人気を博した絵師で、近年再評価されつつある人物です。
鉄道省から依頼され作成した大正13年刊「鉄道旅行案内」は吉田初三郎の代表作で、全国の都市や観光名所の鳥瞰図を多数収録した書籍です。小さめの本に収録されたものなので、パンフレットの鳥瞰図より簡略化されていますが、それでもこの本を読んでますと日本中を旅した気分にさせられます。

福知山市街を描いた吉田初三郎の作品はネットで調べたところ昭和29年のものがあるようですが、それ以外は見当たらず京都府立総合資料館の所蔵リストにもありませんでした。
この福知山市鳥瞰図は市政1周年を記念して吉田初三郎に作画を依頼したと推定されますが、同資料を所有する他機関等が見当たらない今、作成の経緯等は分かりません。
戦前の昭和期の福知山市街を知る資料として、戦前の福知山市を描いた吉田初三郎の作品としてそれなりに貴重な資料と私は思いますがいかがでしょうか。

※関連記事
冊子・北丹鉄道沿線名所図会(吉田初三郎 大正13年)
冊子・宮津橋立名所図会(吉田初三郎 大正13年
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