冊子・建築写真類聚「改造住宅」巻二(住宅改造博覧会出品住宅)

改造住宅201
大正11年、大阪府箕面市の桜ヶ丘にて住宅博覧会が催されました。日本建築協会により9月21日から11月26日の期間、現地にて実際に住宅25戸が建てられ、大正時代の新たな生活様式や建築様式に即した住宅の改造を提唱するものでした。
この「建築写真類聚・改造住宅」はその住宅改造博覧会にて展示された住宅を紹介したもので、平面図・パース図・外観および内観写真をそれぞれ収録しております。改造住宅は巻一と巻二に分かれ、この巻二には13戸の展示住宅が収められています。
中身は綴じられていないページが50枚セットとなっており、価格表なども付属しています。
以下に中身のページを紹介していきます。「続きを読む」からご覧ください。
改造住宅202
中表紙に当たるページ。住宅改造博覧会の会場の写真が載せられてます。
改造住宅203
「大林組出品住宅(A)」。平面図。
数寄屋建築の手法を加味した外観としており、解説には私の好きな家の一つと好評価を得ています。
内部も全体的に褒めており、選者のお気に入りだったようです。
改造住宅204
パース図。
改造住宅205
外観及び内部の居間兼食堂。
外観は日本瓦に格子窓、庭園は竹垣や石灯籠を配するなど全体的に和風のデザインで、内部も欄間等の和風、それでいてイスとテーブルを置く時代に合わせた洋風スタイルも取り入れています。
改造住宅206
書斎兼客間。
こちらは完全に洋風の造りです。応接室はやはり洋間にする必要があったんでしょう。
改造住宅207
「大林組出品住宅(B)」平面図及び外観。
コロニアル式。解説ではプランAに比べて少々物足りないが居間から書斎兼応接室を望んだ所は大変良いと評しています。
よほどAプランがお気に入りだったようです。
改造住宅208
内部の居間と寝室。
居間は完全な洋室で、花柄の壁紙やピアノなど中流以上の家庭をイメージしているようです。
左奥はストーブでしょうか。寝室は畳敷きの和室で床の間のような作り付けのベッドが面白いです。
改造住宅209
「片岡建築事務所出品住宅(甲)」。平面図。
和洋折衷式。かつて辰野金吾と組んでいた片岡安の建築事務所の出品作品。
解説では割合落ち着いた外観、プランはかなり単純で洋館としては平凡な間取りとあり、さして目立つ点の無い無難な設計だったようです。
改造住宅210
パース図。
改造住宅211
外観及び内部の居間兼食堂。
外観は確かに装飾が少なく簡素で落ち着いた眼科んです。所々にあるベランダが唯一のアクセントでしょうか。
内部の居間兼食堂は基本は洋間ですが欄間を入れるなど和風の要素も取り入れてます。
間仕切り壁にはめられたステンドグラスが素敵ですね。
改造住宅212
「片岡建築事務所出品作品(B)」。平面図。
甲号に比べて重厚な雰囲気のある外観ですが、解説では乙号より甲号のすんなり落ち着いたタイプの方が好きとあります。
同じ方向に向いた3つの屋根妻が一寸うるさく重なり合って⑦押さえつけてるような重々しさを感じるなど乙号の評価はあまり芳しくないようです。
改造住宅213
外観及び内部の広間と居間食堂。
解説者の完全な主観で低めの評価を付けられた乙号住宅ですが、私はこちらの方が好みですね(笑)
改造住宅214
「横河時介氏出品住宅」。平面図及び外観。
アメリカ式コッテージ。横河時介は建築家・横河民輔の長男で、横河橋梁・横河電機の社長だった人。
写真は元々内部写真は無く、外観の写真のみです。てっぺんから玄関屋根まで大きく降ろされた屋根が特徴的ですね。
玄関前に犬がいます。これも展示品・・・ではないでしょうけど(笑)
改造住宅215
「あめりか屋出品住宅」。平面図及びパース図。
所謂あめりか屋式とあります。あめりか屋は明治42年に誕生した建築会社で、戦前において洋風住宅を中心に多くの作品を残しました。現在も建築会社として存続しています。
改造住宅216
外観。すっきりした外観の洋館ですね。
改造住宅217
内部の居間と寝室。
こちらも徹底した洋風の造りです。ただ、パース図に描かれている付属棟は和風のように見えます。
やはり落ち着きのある和室は当時の人たちには欠かせないものだったのでしょう。
改造住宅218
「鴻池組出品住宅」。平面図及びパース図。
こじんまりと気持ちのいい家と評していつつ、玄関の持ち出し庇がプロポーションを破っているようで目障りと批判しています。
改造住宅219
外観及び内部の食堂。
確かに玄関の寄棟の庇はアンバランスでもう少し控えめにした方が良い気はします。
食堂は完全な洋風ですね。作り付けのソファーはくつろぎ用でしょうか。窓側の柱の上部にも装飾があり凝ってます。
改造住宅220
「真水三橋建築事務所出品住宅」。平面図及びパース図。
準バンガロー式。設計者は形と色調の美にはよほど注意されたそうですが、形の美には御同感できますけれど、色調にはいささか追従し難いと評しています。この作品に関しては解説者的にはやや評価は低いようですね。
次にパース図ですが、建物の周囲や背後に奇怪なオブジェのような物体が。植栽を表現したのかもしれませんが、あまりに前衛的なこの表現は現実から離れた異世界を思わせる雰囲気に見えてしまいます。芸術作品としての絵画ならまだしも、建築での図面でこの表現は許されたのでしょうか。まぁ許されたから採用されて使われているんでしょうけど、となると、結構自由だったんですかね。
改造住宅221
外観及び内部の居間兼食堂。
外観は私的には申し訳ないけど1階のベランダが無ければ工場の建物か倉庫に見えてしまいます(笑)
内部は洋風ですが、右側の壁の蝋燭をあしらった照明は中々オシャレです。
ただ、食堂も兼ねる居間のすぐ隣にトイレがあるのはどうなんでしょう・・・
あと、左側は作り付けの座敷みたいになってますが、スペース的に自由度を奪っているようにも見えます。
改造住宅222
「大阪住宅経営株式会社出品住宅」。平面図及びパース図。
会場で唯一の平屋建て。外壁に新工法を採用しているが、一面に暗緑色の斑点を表しているのはいかにも不愉快と割と酷評していますが、内部に関しては生活のために生活する人には極めて便利な経済的な家と評しています。
改造住宅223
外観及び内部の書斎兼応接室。
外観は確かに他の出品住宅に比べてこじんまりとしてます。その分比較的安価であったため、すでに売約済みの札が架かっています。
内部も小規模ではありますが、開放感があり、狭苦しい印象は緩和されているように見えます。
改造住宅224
「銭高組出品住宅」。平面図及びパース図。
バンガロー式。現在もゼネコン会社として存在する銭高組。解説ではさっぱりした外観で大変柔らかな感じを出しているが、全体の輪郭に今少し工夫して欲しいと評しています。また、この家の間取りは一体に各室の親しみが薄いように思われるとあまり良い評価はしていません。
改造住宅225
外観及び内部の居間兼食堂。
外観はなんとなく鈍重な感じに思えます。内部は基本洋風ですが、棚の引き戸は木目を生かした造りで和風もある程度意識してますね。
改造住宅226
「葛野氏出品住宅」。平面図及び外観。
和風バンガロー式。関西を中心に活動した建築家・葛野壮一郎の作品。
非常にいい形の家で、日本建築の趣味的体観を表現しえた所に多大の苦心が窺われます等全体的に好評価で書かれています。
外観は1階のバンガロー風と2階の数寄屋風がうまくマッチしてますね。手前は藤棚でしょうか。
改造住宅227
内部の居間兼食堂と書斎の一部。
基本的には洋風の造りですが、書斎は奥が畳敷きで床の間風の棚に襖のような引き戸を取り入れるなど、和風の要素も取り入れています。
改造住宅228
「清水組大阪支店出品住宅」。平面図及びパース図。
和洋折衷。清水組は現在の大手ゼネコン、清水建設の前身。解説は全体的に好評価ですね。
解説者は基本的に和洋折衷が好きなんでしょうか。
改造住宅229
外観及び内部の客間。
解説では褒めまくってますが、洋風の外観に付けられた入母屋破風の玄関部分の屋根はちょっとアンバランスのような気もしますが…
客間は広々として開放感があります。ホームパーティーなどを開く際にはうってつけの空間です。自然の丸太を模したような柱は中々インパクトがあります。
改造住宅230
内部の広間。
広間というか廊下に見えますが。階段の側に洗面台がありますが、これ、床が飛び散った水でべちゃべちゃになりそうな…。
改造住宅232
「横田組出品住宅」平面図及びパース図。
近世式。側面の感じはいいが、ゴテゴテした正面の形、玄関上の軒出は感服できないと評してます。
改造住宅233
外観。
軒の張り出しは確かにちょっと過剰に見えなくもないです。屋根はアスベスト葺きという変わったもの。耐久性はどうだったんでしょうか。現在では採用できないものですね。内部写真は元々入っていません。
改造住宅234
※画像のクリックで拡大します。
改造住宅巻二収録分の住宅改造博覧会出品住宅の坪数・価格表と住宅の家具装飾諸般設備の価格表。

住宅改造博覧会は好評のうちに終了し、展示住宅はそのまま分譲販売されました。博覧会終了翌年に新たに建てられた住宅もありました。
現在は展示された25戸のうち7戸、博覧会終了翌年に建てられた1戸が現存し、うち4戸が国指定登録文化財に指定されています。また、西側の博覧会本館や噴水・休憩室・映画館・音楽堂があった野外会場は博覧会終了後撤去され新たに区割りされましたが、東側の住宅展示会場はそのまま分譲されたため、博覧会当時の街並みや区割りがそのまま残されており、大正時代の洋風住宅が街並みとして残る全国でも貴重な住宅地であり、街並み景観保護のため2005年には景観形成基準が制定されました。

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